医療情報コラボレーションGIS−患者マーケティングの応用研究−
岩場 貴司*、木村 浩之**、川端 眞人**
*:RITS総合研究所 **:神戸大学医学部医学研究国際交流センター
Medical Information GIS collaborated by medical facilities about list of inpatientsAbstract:
We represent an estimation of Medical Information GIS collaborated with HOSPITAL attached to KOBE UNIVERSITY,it is about list of inpatients in Kobe city area maps originated by RITS RESEACH INSTITUTE CO. (originally published by TOKYU LAND CO.).We developed a tendency to come to the hospital in October, 2001 of each block..
Keyword: medical facilities information GIS,inpatients tendency,medical system
1.背景
国際的IT化推進の中、ITインフラの整備が急速に進展さらにITによる周辺技術が目覚しい発展を続けます今日、ふと足元を見つめなおしたときに私たち市民一人一人にとってITとはいったいなんだろうか。もっと身近に地域社会の中でのIT、特に高齢化社会が進む都市部における地域情報について考えますと医療機関にたいする期待・役割はいや増して大きくなるものと思われます
2.医療機関における患者マーケティング
第一歩として、まず医療機関側における患者データのマーケティング能力を構築する必要性がある。いままで医療機関は患者(診察券)情報についてはデータ化はされているがその情報内容を分析する試みについては積極的とはいえないのが現状である。しかし、これからの医療は患者が来院するのを待つだけではなく、自分の病院にきている患者がどこからどのような症状の患者がきているのか、また来院している患者はどのような傾向をもっているのかを知ることで病院として取り組むべき課題・サービスの内容について改善すべき点をビジュアル化することで明日の医療サービスの充実に大きく貢献できるものと考えられる。一方市民が日常で気が付いた医療情報、たとえば主婦の方たちが日中に子供の病気のこと、評判のいい病院のこと等々の情報交換サイトだったり患者が病院にふと気が付いたこと等々を地図にポイント地域情報で落としてその意見・地域情報に対する回答・地域情報等をまた別の人が返せるようなコミュニケーションインフラを構築したい。
3.具体的期待値・効果
GISベースの患者情報インフラを構築することによるより効率的かつ質の高い地域医療サービスの提供につながる。ある地域で災害が発生した場合、その地域に当該病院の患者が居住していた場合、その症状の状況に対応した病院側からの情報発信が可能となる。また、一方で病院側には情報が不足していると思われる点もある。たとえば、地域の中で子供を抱えるお母さん達は、何気ない日常活動の中であの病院は…、この病院は…という情報交換を井戸端会議でやっているとします。その言葉の中に、病院側がより改善すべき点・あるいはとてもよく評価されている点。等がヒントとして隠されているものです。仮に2児の子供を持つ母親なら一人は診察中に何らかな形で誰かに預けなければなりませんが、子供の遊びスペースを持った病院なら安心していくこともできるでしょう。こうした意見に病院側が耳を傾けられるいい機会つくりにつながることを期待したい。
4.医療安全対策への応用
厚生労働省は医療安全推進総合対策〜医療事故を未然に防止するために〜医療安全対策検討会議(平成14年4月17日)の中で1−1 医療の安全と信頼を高めるためにと題して 医療は、本来、患者と医療従事者の信頼関係、ひいては医療に対する信頼の下で、患者の救命や健康回復を最優先として行われるべきものである。しかしながら、医療の現場において、医療事故により患者が死亡するなど痛ましい事案が発生しており、国民生活の安定・安心に最も密接な関わりを持つ医療に対し、信頼が揺らぎかねない状況となっている。とある。
こうした事故は、個々の医療従事者の単純な誤りや、防ぎ得たにもかかわらず組織としての取組不足で起こった誤りである場合など、様々なものがあるが、医療機関の患者情報に対する希薄性がいがめないと思われ我が国の医療政策における緊急の課題となっている。具体的な形としての医療安全の確保はもとより重要である。しかし、近年の医療の高度化・複雑化等を背景に、医療従事者個人の努力に依拠したシステム、すなわち従来の職種や診療科ごとの医療技術や知識に基づいたシステムでの医療安全の確保は難しくなってきており、安全対策の在り方を見直すことが必要となっている。
一方患者や医療機関に身近な二次医療圏等に公的な相談体制を整備するとともに、都道府県には第三者である専門家等も配置した「医療安全相談センター(仮称)」を設置するなど、必要に応じて医療機関への問い合わせや、場合によっては指導等を行う体制を整備することが必要であるという指摘もある。
さらに、これまで、医療の医師会や歯科医師会等においても患者の相談業務が行われてきたところであるが、他の関係団体においてもこのような取組を充実させていくことが期待される。こうした背景の前提には、つまり医療の現場でも顧客つまり患者情報を蓄積することが重要でありかつその属性を病院側として分析し貴重なデータベースとして活用していきたい。患者がどこから来ていて、その患者がどのような傾向性をもっているのか、また、緊急時にその被災地にいる患者対して病院から他の医療機関に対して信号を発することも可能である。 こうした取組みを通じて、医療機関が単に「来る患者を待つ病院」から「患者とSOHOな病院」へと変身できる大きなきっかけとなりうる。病院が今後目指すべき方向は、おそらく病気治療中心の医療ではなく、患者情報の蓄積分析等々による病気防止のコンサルティング機能といった形へと業容を拡大していくものと思われる。医療制度改革の進展及び高齢化社会を迎えるにあたり、今日の医療現場のあり方について再検討の必要性が高まりつつある。そこで病院側として受診患者の地理的要因分析からの傾向性を掌握するための分析手法としてGIS(地理情報システム)を活用し、今後の保健医療分野における実用性について探求していきたい。
5.分析実例5−1
神戸大学病院受診患者データ図−1を用いてGIS上に展開し図−2のような点分布を作成しさらに、図−3では分析単位として町大字ポリゴン毎の患者数及び人口集計した結果を主題図として表した。概ね病院から半径5km以内に集中する傾向がみられる。特に名谷地区(神大病院西部)の患者割合が高いが、近隣に医療機関が少ないことが要因であると考えられる。

図−1 医療情報部からの患者リスト

図−2 患者の分布状況

図−3町大字毎の患者割合
5−2 図−4は患者平均年齢を町大字毎に主題図を作成した。その結果神大病院から半径5km圏内では平均年齢が高い傾向がみられた。先の名谷地区においては患者数割合が高かったが平均年齢は比較的低い。調査結果この地域の老齢人口割合は決して低くはない。さらに同規模の病院の周辺も平均年齢が低い。高齢者は近隣の病院で受診する傾向が伺われる。
 
図−4 町大字毎の 患者平均年齢
※いずれもRTIS MARKETING MAP 採用
6.統計的解析
6−1.神戸大学病院からの距離と患者割合
表2に示すように神戸大学病院に近い大字ほど人口に対する患者割合が有意に高く、受診者は病院の近くに集中する傾向が見られる。

6−2.他の総合病院からの距離と患者割合
表3は概ね神戸大学病院と同規模の3総合病院(C病院・K病院・Nセンター)からの距離による大字単位での人口に対する患者割合を示しているが、3−5kmの大字に対して3km以内の大字の患者割合が有意に低い。つまりこれらの大字からは近くの総合病院を受診する傾向がうかがわれる。

6−3.神戸大学病院からの距離による患者の平均年齢
表4は、神戸大学病院からの患者の自宅までの距離と年齢との関係を示しているが、5km以内の患者の平均年齢が、5km以上に比較して有意に高い。

6−4.他の総合病院からの距離による患者の平均年齢
表5は他の総合病院からの患者の自宅までの距離と年齢との関係を示しているが、有意差はみられないものの、1km以内における神戸大学病院の受診患者の平均年齢は低い傾向にあり、表3の結果も併せると、高齢者は近くの病院を受診する傾向にあるのではないかと推測される。

7.まとめ
今回、GIS を活用して病院受診患者の地理的傾向性の掌握を試みた。その結果、神戸大学病院は特定機能病院であり一次医療機関からの紹介患者が多いにも関わらず、受診患者は病院の近郊に集中する傾向がうかがわれた。さらに、同規模の病院の近郊では、神戸大学病院を受診する患者割合が少なく、それらの病院を受診しているのではないかと考えられる。一方で、神戸大学病院の近郊では患者の平均年齢が高く、高齢者は近くの病院を受診する傾向にあることが推測される。
さらに今後は人口密度および老齢化指数といった人口統計的要素、駅からの距離や道路の状況等交通の利便性、移動に関する地理的要因、受診患者の治療目的(臨床診断名)等、患者の病院受診に関連する要因についても考慮した上で分析を展開していきたい。さらに神戸大学病院のみならず他の病院においても同様の調査解析をすることが望まれる。 以上 |